ももひきとステテコの違いを歴史と機能から解説
「ももひき」と「ステテコ」はどちらも下半身に履くインナーウェアですが、その目的と使われ方にははっきりとした違いがあります。ももひきは主に冬の防寒用として作られた厚手の下着で、ステテコは夏場の通気性や快適さを重視した薄手の下着です。つまり、季節や目的によって使い分けるのが基本となります。
「ももひき」という言葉は江戸時代の武士の防寒具に由来しており、袴の下に履いて寒さをしのぐためのものでした。時代とともに庶民にも広まり、明治期には「股引（ももひき）」として一般的に普及しました。その後、昭和時代には「ズボン下」「パッチ」などの名称でも呼ばれるようになり、現在では防寒タイツのような存在として受け継がれています。
一方、ステテコは明治後期から昭和初期にかけて登場し、夏の暑い時期に着物やズボンの下に履く「涼しい下着」として誕生しました。素材は綿が中心で、汗を吸い取り、生地と肌の間に空気の層を作ってベタつきを防ぐのが特徴です。ステテコの語源は「捨ててこ（捨てても惜しくない）」という説が有力で、気軽に洗えて乾きやすい庶民的なアイテムとして人気を集めました。
また、「パッチ」や「ズボン下」といった言葉も地域によって使われ方が異なります。関西では「パッチ」、東北では「ズボン下」、九州では「バッチ」と呼ばれることもあり、同じアイテムでも方言によって表現が変わるのが面白い点です。
ももひきとステテコの語源・由来を詳しく解説
「ももひき」という言葉は「腿（もも）を引く」動作に由来します。ももを覆って引き締める衣類という意味で、古くは武士が鎧の下に着る防寒具として使っていました。これが明治時代に庶民にも広がり、冬の生活必需品として定着しました。
一方の「ステテコ」は、「捨ててこ」から来たと言われています。汗をかいてもすぐ洗えて、使い古したら“捨ててもいい”ほど安価だったことが理由とされています。もう一つの説では、落語の演目「捨ててこ節」から取られたとも言われています。いずれにせよ、庶民の生活に密着した下着文化の象徴です。
こうした日本語の変遷を見ると、衣服が生活と密接に結びついていたことがわかります。江戸〜昭和〜令和と、呼び方は変わっても「快適に過ごすための工夫」という本質は変わっていません。
素材と機能の進化から見る「ももひき」と「ステテコ」の違い
昔はどちらも綿素材が中心でしたが、現代ではヒートテックやエアリズムといった高機能素材が主流になっています。ももひきは吸湿発熱素材を使い、暖かさと伸縮性を両立。一方ステテコは吸汗速乾素材を採用し、汗をすぐに発散してサラッとした履き心地を実現しています。
また、肌触りや通気性も進化しており、ステテコは風通しの良いメッシュ素材や、冷感加工タイプも登場。ももひきは保温性を保ちながらも薄く軽い生地が増えており、重ね着しても蒸れにくくなっています。季節によって「ももひき＝冬」「ステテコ＝夏」と使い分けることで、一年を通じて快適に過ごせるようになりました。
現代版「ももひき」と「ステテコ」の違いと新しい呼び方
現代では「ももひき」という言葉自体があまり使われなくなり、「レギンス」「タイツ」「アンダーパンツ」などの言葉に置き換えられています。特にユニクロのヒートテックシリーズが登場してからは、「ヒートテックタイツ」という名称が一般化しました。
一方のステテコも、ユニクロの「エアリズムステテコ」が人気を集めており、もはや“部屋着”や“リラックスウェア”として認識されるようになっています。昔のように「おじさんの下着」という印象は薄れ、男女問わず夏の快適ウェアとして定着しました。
ヒートテックタイツは吸湿発熱・防臭・伸縮性に優れており、寒冷地や通勤・通学時に最適です。エアリズムステテコは軽くて通気性が高く、夏場の部屋着やワンマイルウェアにぴったりです。この2つを季節で使い分けるのが、現代流の“ももひき＆ステテコ術”といえるでしょう。
ファッションとしての「見せる下着」文化の進化
かつては下着として見せることを避けられていたももひきやステテコですが、今ではファッションの一部として受け入れられています。ステテコはその代表例で、涼しげな柄や素材感を活かした“おしゃれ部屋着”として人気を集めています。
特に若い世代や女性の間では、「リラックスウェア」や「ワンマイルウェア」として使う人も多く、ステテコをパンツ感覚で履くスタイルがSNSでも注目されています。ももひきも、タイツやレギンスとしてコーディネートに取り入れられ、冬の重ね着ファッションの定番となりました。
地域・世代で違う！呼び方と文化の違い
地域によって呼び方が異なるのもこの2つの面白い特徴です。関西では「パッチ」、東北では「ズボン下」、北海道では「ももした」など、地方ごとに異なる呼称が存在します。
また、世代間でもイメージが異なり、昭和世代にとって「ももひき」は防寒具、令和世代にとっては“機能性タイツ”。呼び名が変わることでイメージもアップデートされ、ももひき＝ダサいという印象は過去のものとなっています。
季節・用途別で選ぶ！おすすめ活用法
冬は保温性に優れたヒートテックももひきを、夏は吸汗速乾のステテコを選ぶのが基本です。寒い季節には「ヒートテック極暖」や「グンゼの綿混ももひき」、暑い季節には「ユニクロのエアリズムステテコ」や「無印良品のオーガニックコットンステテコ」などが人気です。
洗濯時はネットに入れて優しく洗い、乾燥機は避けると長持ちします。特にステテコは薄手のため、日陰干しが生地を痛めずおすすめです。1〜2シーズンで新調すると、清潔で快適な状態を保てます。
豆知識・トリビア：意外と知らない「ももひき」文化
昭和の時代には「ステテコおじさん」という愛称でテレビCMが放送され、ユーモラスな印象が全国に広まりました。また、ドラマやアニメでもももひきを履いたキャラクターが登場するなど、庶民文化の象徴として親しまれてきました。
さらに、海外ではステテコが“クールな日本文化”として再評価されており、涼しく快適な日本製下着として人気が高まっています。ステテコは「SUZUKI TAKAYUKI」などのファッションブランドでもアレンジされ、現代的なデザインへと進化しています。
まとめ｜「ももひき」と「ステテコ」を知れば、季節をもっと快適に過ごせる
ももひきとステテコは、見た目は似ていても目的と使い方がまったく異なります。ももひきは防寒用、ステテコは通気・快適用という明確な違いがあります。歴史をたどると、どちらも日本人の生活に根付いた“知恵の衣服”です。
現代ではユニクロや無印良品などが機能性素材を取り入れ、ももひき＝ヒートテック、ステテコ＝エアリズムといった新しい形で進化しています。呼び名は変わっても、その本質は変わらず「季節を快適に過ごすための工夫」。それを理解して上手に使い分けることで、一年を通して心地よい暮らしが手に入ります。
